3年目の決意表明

こんばんは、中村です。みなさまのご愛顧のおかげで5月12日に無事に2周年を迎えられましたこと、改めて御礼申し上げます。

 

記念日当日はたくさんのお客さま、お友達からお祝いのメールやメッセージをいただきました。長期休業中だったにもかかわらず春道堂と私のことを思い出していただけて、本当にありがたく思いました。

 

お店がなければ一生関わることもなかった方たちとの温かなつながりこそが、この2年間で私が手にした最大の財産なのだと強く感じました。2周年の節目をお店で迎えることはできませんでしたが、本当に私は幸せな女です。

 

 

長期休業につながる事故のあった4月28日の翌日午後から5月19日まで、店に入ることすら出来ずに過ごしておりました。

 

休業中はより良い店作りのための充電期間と決めて、日曜定休のお店やずっと気になっていたお店に行ったりして、一年分くらい外食しました。

 

飲食業を志した時から、この先の人生は世間様が遊ぶ時にこそ長時間働くものと心に決めていましたから、まさか連休の夜のすすきのをお客の立場で楽しむ日が来るとは思っていませんでした。

 

本当ならば私も忙しく過ごしていたのにと寂しく思うと同時に、酔客に混じってすすきので遊びまわることの楽しさに身が打ち震えたのも正直なところです。我が愛するすすきのはなんて素敵な街なのだろうかと惚れ直しました。

 

思えばこれまでの2年間、あれもやらなきゃこれもやらなきゃこれはどうだろうと常に気が急いていて、休業日でも仕事のことで頭がいっぱいで、きちんと立ち止まってものを考える余裕もありませんでした。今回は再開日が未定だったので、開業後初めて脳内を完全に自由にすることが出来た気がします。

 

 

春道堂を開くときに私は、自分が行きたい店、友達がやっていたらうれしい店にしたいと思っていましたが、さらにもう一つ、大きな目標もありました。それは、本物の料理を作る本物の料理人になりたいということでした。この話は今までにも何度か書いたような気がします。

 

手間をかけて丁寧に仕込んだまっとうな料理を、私のような庶民でも利用できる価格でご提供したい。2年前そんな志を持って店を開きました。その気持ちは今も変わらず、この二年間で調理技術はより向上し、確実においしいものをお出しできるようになったとの自信もあります。

 

しかし休業中に色々なお店を食べ歩いたことで、世の中にはおいしく楽しく心躍らせる料理がこんなにもたくさんあると言うことに衝撃を受けました。もちろん今までだっていろんなものを食べてきたのですが、2年間迷い悩みながら一人厨房に立ち続けた後だからこそ、私の感じ方も大きく異なったのかもしれません。

 

特に2周年記念に友達がごちそうしてくれた高級フレンチのコースは衝撃でした。一皿一皿が華麗で楽しくてしかも完璧においしくて、今までに経験したことのない感動を覚えました。全身全霊を傾け、心を研ぎ澄ませて作っていることが料理から伝わってきて、私もこんな風に味で人の心を震わすことの出来る、本物の料理人になりたいと思いました。

 

そして自分の甘さを思い知りました。おいしいものを作れるようになったくらいでは料理道の入り口に立っただけで、道は果てしなく遠くまで続いているのです。調理の仕事をする者として毎回同じおいしさをご提供できるのは当然のことで、味も見た目も常に更なる高みを目指し続けなければならないのです。

 

30を過ぎて料理の道に入った私は他の料理人の何倍も真剣に料理の勉強をしなければならないのに、いつの間にか迷いが生じ、料理以外のことにも気持ちと時間を取られてしまったこともありました。魅力的な料理を作ることを最優先に考えれば良かっただけなのに、こんな単純なことに気付くまで2年もかかってしまいました。

 

私ももう42歳、人生の残り時間はどんどん減って行きます。80歳まで生きられるとしても、あと38年しか時間がありません。ここまでの42年間はあっという間でした。ぼんやりしていると次の38年もあっという間に過ぎ去ってしまいます。

 

1日1日を大事に真剣に料理に向かわなければ、何事も成さないままに人生が終わってしまいます。自分にしか出来ないことを目指さなきゃ、大きなリスクを負って独立した意味がないというのに。

 

もっと腕を上げて、感性を高めて、おいしいことはもちろん、個性的で楽しい私だけの料理でお客さんの心を動かせる本物の料理人になりたいと強く思います。

 

料理人として精進する気持ちを忘れないよう、20日の営業再開後からは調理服を着用して厨房に立ってます。気持ちが引き締まってよい感じです。

 

 

長期に渡る休業でお客様には多大なるご迷惑をおかけしましたが、長い時間をかけて自分の原点を見つめなおし、迷いを断ち切り、これから目指すべき道を明確にすることが出来ました。

 

明確になったからと言って急に調理技術が上達するわけでもなく、すぐに大きく変える事はむずかしいかもしれませんが、本物の料理人を目指すと言う志を第一に、地に足を着けて春道堂を進化させて行きたいと思っております。

 

私は今まで以上に料理道に精進いたしますが、春道堂は変わらずおいしく楽しくあずましい店であり続けます。お客様には今までどおりお気軽にご利用いただけたら幸いです。

 

最後になりましたが、無事3年目を迎えられましたこと、ひとえにお客さまの応援のおかげでございます。心より御礼申し上げますとともに、これからもより一層のご愛顧のほど、よろしくお願い申し上げます。

 

 

店主 中村

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